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遺言(ゆいごん)
あるところに,たいへんへそまがりな息子(むすこ)がおりました。
親父(おやじ)が病気になり,もう死ぬという時に,息子を呼んで,「もはや,わしも,この世(よ)におさらばじゃ。いっておくが,わしが死んでも,必ず(かならず)、葬式(そうしき)などはするなよ。こもに包んで(つつんで),川(かわ)へながせ。」と,心にもないことを言いました。
実は,この親父,前前(まえまえ)から,息子のへそまがりぶりを知っていましたから,遺言(ゆいごん)は,反対(はんたい)の事を言っておけば,立派(りっぱ)な葬式をするだろうと思ったのです。
ところが,親父の遺言をじっと聞いていた息子,「安心してください。これまで,親(おや)のいうことは,何一つ(なにひとつ),聞かなかったから,せめて,一生(いっしょう)に一度ぐらいは,言われた通りにしましょう。」
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