日语阅读:うれしきピエロ

日语阅读:うれしきピエロ,第1张

日语阅读:うれしきピエロ,第2张

「あなたってだいたい忍耐力がないのよね」

  デートの途中、彼女にそう言われておれは頭に来た。

  「何言ってんだ。おれほど我慢強い男はいないぞ」

  「そんなに言うなら証明して見せてよ」

  「証明……?」

  その時、おれの目にある貼り紙が飛び込んで来た。

  「私を見ても笑わなかった方には千ドル差し上げます。挑戦料:一ドル……」

  貼り紙の側では、一人の陽気なピエロが笑顔を振りまいている。

  「ようし、これに挑戦してやる!」

  おれは一ドルをピエロに渡すと、口を真一文字に結んで身構えた。

  ピエロはたちまち激しく動き始めた。

  「あははははははははははははははははははははははははははははははは」

  その滑稽な動きに、側で見ていた彼女がたちまち笑い始める。おれは顔を赤くしつつも必死に耐えたのだが、それも虚しい抵抗だった。

  「ぶわはははははははははははははははははははははははははははははは」

  「あははははははははははははははははははははははははははははははは」

  おれたちは二人で笑い転げた。少しも悔しくはなかった。バカバカしいというか、なんというか……。それほどピエロの動きは面白かったのだ。これを見て笑わない奴なんているわけがない。

  「ハァハァ。いやぁ、面白かったなぁ……」

  おれたちは息を弾ませながら再び街を歩き始めた。

  「でも、やっぱりあなたって何をやらせてもダメなのよね」

  「何言ってんだ。今のはピエロが凄すぎたんだ。大抵のことはおれは……」

  「そんなに言うなら証明して見せてよ」

  「証明……?」

  その時、おれの目にある貼り紙が飛び込んで来た。

  「私を笑わせることができたら千ドル差し上げます。挑戦料:一ドル……」

  貼り紙の側には、一人の陰気なピエロが無表情にたたずんでいる。

  「ようし、これに挑戦してやる!」

  おれは一ドルをピエロに渡すと、考えつく限りのおどけたポーズをとった。

  「あははは。おっかしぃ~」

  彼女はおれの格好を見て笑い出したが、ピエロはまるで笑ってはくれない。

  「制限時間です」ピエロは無表情なままそう言って立ち上がった。無表情な中にも見下した視線が感じられたのは気のせいか。

  彼女は言った。「やっぱりダメな人ね」

  爆発しそうになったおれの頭の中に、その瞬間ある考えが閃いた。

  「ちょっと待っててくれ」おれは彼女にそう言うと、今来た道を引き返し、最初のピエロを連れて戻ってきた。二人を同時におれの代理として対決させようというわけだ。

  「勝つ自信はありますが、勝った賞金をピンハネされては困ります」二人のピエロの言葉をおれは制した。

  「安心しろ。負けた方には貼り紙通りに賞金千ドルを払ってもらう。見事挑戦を退けた勝者にはおれから千ドル払おう」

  どちらが勝ってもおれは千ドルを手にし、千ドル支払わなければいけない。

  つまり実質、金は二人の間で動くだけ。おれは仲介を務めるだけで損得はないというわけだ。二人に払う二ドルは対決の観戦料だと思えばいい。計二ドルでピエロのどちらかがひれ伏した姿を拝めるのだ。安いもんじゃないか。

  おれは彼女に言った。「優れた人間は人を使って楽しむものだよ」

  かくして二人のピエロは対峙した。陽気なピエロはさらに熱の入った芸を披露した。

  「どわはははははははははははははははははははははははははははははは」

  「あははははははははははははははははははははははははははははははは」

  おれと彼女は腹を抱えて笑い転げた。だが、陰気なピエロは無表情なままである。

  陽気なピエロは渾身の芸を次々と繰り出したが、彼はクスリともしない。

  こりゃあ勝負あったかな。笑い転げながらおれがそう思ったとき、陰気なピエロはおもむろに立ち上がり、なにやら叫ぶとその場で転がり始めた。

  「ぎゃはははははははははははははははははははははははははははははは」

  陽気なピエロの逆転勝ちである。早速おれは敗者の陰気なピエロに駆け寄った。残念だったな。さあ、千ドル払ってもらおうか」

  「いいえ、私は勝ちました」

  陰気なピエロはそう言うと、自分の貼り紙を指さした。そこには「……制限時間:十分」と書かれていた。時間を見ると、すでに対決開始から十分少々経過している。陰気なピエロは制限時間が来たことを宣言した後、心おきなく笑い転げたのだった。

  おれは身をひるがえし、真の敗者である陽気なピエロに駆け寄った。

  「残念だったな。さあ、千ドル払ってもらおうか」

  「いいえ、私は勝ちました」

  陽気なピエロはそう言うと、自分のビラを差し出した。そこには「……制限時間:十五分」と書かれていた。

  彼女が言う。「あなたってだいたい考えなしなのよね」

  おれは返す言葉もなく、ひたすら来月の生活費を計算していた。

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